彼らが建てたものを、私たちが保存します。
このたび「ミンカコン2025」の基調講演者として、ワールド・モニュメント財団 前会長 クリス・オアストロム氏 と、ワールド・モニュメント財団 日本代表部・理事長 ディメイ美代子氏 をお迎えできることを、心よりご案内申し上げます
Chris Ohstrom
クリス氏は、長年にわたり国際的な保存活動に積極的に取り組んでまいりました。世界的に著名な文化遺産保護団体であるワールド・モニュメント財団の理事長を8年間務めたほか、数多くの保存関連 NGO においても要職を歴任しております。ジャマイカにおいては、建造物の修復と職業訓練、低所得層住宅の改善、そしてヘリテージ・ツーリズムを通じた持続可能な地域経済の発展を結びつける非営利団体を設立いたしました。現在は、ジャマイカのコックピット山地にてリトリート施設を計画しており、その宿泊棟の一つとして、解体・再構築した民家（minka）を再解釈した建物を設ける予定です。
一方、アメリカ・バージニア州においては、自ら十三棟の19世紀建築を丹念に解体・移築し、独自の建築群を形成して暮らしております。
さらに保存活動に加えて、クリス氏は伝統的な塗料および壁紙の製作者でもあり、Adelphi Paper Hangings の創設者です。彼が手掛けた木版刷り壁紙の復刻品や手作りの建築用塗料は、ジェファーソンのモンティチェロ邸、メトロポリタン美術館、ホワイトハウス、ウォルポールのストロベリー・ヒル邸など、著名な建造物において使用されています。
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Miyoko Demay
美代子氏は、30年以上にわたりビジネスと文化の交差点において国際的なリーダーシップを発揮してこられました。キャリアの出発点はティファニー社であり、着実に経験を重ね、やがて同社のグローバルな事業運営において重要な役割を担うまでに至りました。ティファニー・ジャパンの社長およびグローバル営業統括副社長を務める中で、企業戦略の刷新、企業文化の向上、そして顧客との関係深化に大きな成果を収めたことで広く知られております。
現在はその卓越した情熱を新たな使命に注ぎ、文化保存の分野で活躍されています。ワールド・モニュメント財団日本代表として、日本の豊かな有形・無形文化遺産の保護に尽力し、保存プロジェクトを導き、地域社会との重要なパートナーシップを築いておられます。
さらに、任天堂株式会社の社外取締役として戦略的助言を行うとともに、シャンパーニュ騎士団のデーム・シュヴァリエとしても顕彰されています。多様性の推進や次世代リーダーの育成にも深く取り組み、業界の枠を超えて人々を鼓舞し、力を与え続けておられます。
The Keynote at MinkaCon 2025
クリストファー・オールストロム氏（ワールド・モニュメント財団元理事長）は、「保存と修復における冒険」と題してご講演くださいます。伝統的な塗料・壁紙職人としての経験、保存活動のリーダーとしての歩み、そして文化遺産保護に特化した団体の設立者としての取り組みを通じて、モンティチェロ邸やメトロポリタン美術館といった歴史的建造物での活動や、修復と職業訓練・低所得者住宅の改善・ヘリテージツーリズムを結びつけたジャマイカでの草の根プロジェクトについて語られます。さらに、2024年11月に日本と米国の熟練大工によって解体され、現在ジャマイカで瞑想の場として再建されつつある、新潟県糸魚川市の茅葺き古民家の移築についてもご紹介いただきます。
出前美代子氏（ワールド・モニュメント財団日本代表）は、これまでに17〜18件に及ぶ日本での保存プロジェクトを含む、WMFの長年にわたる日本への取り組みについてご講演くださいます。特に、2024年1月の能登半島地震に対する対応に焦点を当て、大規模な被害を受けた伝統木造建築、とりわけ多くの民家（minka）の安定化と保存、そして民家を文化的アイデンティティと継承の象徴とする地域社会の復興支援についてお話しされます。さらに、この活動をWMFの国際的な保存ネットワークの文脈に位置づけ、民家の保護が文化的レジリエンスと地域再生の基盤となりうる視点を共有されます。
お二人の基調講演は、それぞれの歩みと保存における喫緊の課題、そして建築遺産を守ることが文化的記憶の継承にいかに不可欠であるかを浮き彫りにするものとなるでしょう。